日本企業の勝算 感想

新型コロナウイルスの影響から世界では人工呼吸器の増産に「大企業」とされる自動車メーカーや航空宇宙メーカーをも動員しています。
大規模メーカーなら一部の工場を転用して不足が予想される医療機器を補うことができると期待できるからです。

なぜ期待できるのか?

それは経済学で言う「規模の経済」が機能するからです。

企業の規模が大きいほど余裕ができるので、研究開発が進んでイノベーションが生まれます。
また、それぞれの労働者が自分の専門性を発揮しやすいから生産性の向上に貢献しやすくなるということです。

なんて偉そうなことを言っちゃいましたが、この本の言いたいことを私なりにまとめただけです。


日本企業の勝算: 人材確保×生産性×企業成長

ビジネス書には「当たり外れ」がありますが、この本は「当たり」でした。
著者はオックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏です。

この書籍では「日本の生産性が低い最大の原因は中小企業」として産業構造の転換をわかりやすい例を示しながら提言しています。
例えば、2つの国に3000人の労働者がいると仮定して、A国では3社に1000人ずつの労働者を分配し、B国では1社に1000人を、ほかの2000人を2人ずつ1000社に分配するとした場合、人材の質・社会インフラの質・技術力がまったく同じだとしても、A国のほうがB国より明らかに生産性が高くなるとしています。

それは企業の規模が大きくなれば生産性が上がって、小さくなれば下がるという経済学の原理原則に基づきます。

つまり、「大企業の生産性 > 中堅企業の生産性 > 小規模事業者の生産性」であり、テレビドラマや映画などで中小企業を美化するのはいいけど、現実問題としては規模が大きい「大企業」を優遇してこそ日本経済を救うとしています。

確かに、アメリカのようなビッグビジネスが大好きな国の生産性が高いのも厳然たる事実だし、中堅企業が産業構造の中心になっているドイツも生産性が非常に高いです。
逆に、全企業の99.7%が中小企業の日本はこの現実をしっかり受け止める必要がありますね。

正直いって日本人という立場からは「耳が痛い」内容ではありますが、この本に巡り会えたことに感謝です。